パソコン格闘記

パソコン格闘記 2010年


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■突然

突然 パソコンの画面が固まって、動かなくなってしまった。
よくあることで 別段、特に驚くこともないが、過去に何度も痛い目にあったおかげで、本当に大事なものは あらかじめ別のところに待避させてあるし、復旧作業がしやすいような 一応の手だても あらかじめ準備してある。

あわてることもない。

前回、動かなくなったときは、そうした手だてを使って、自分であれこれやっているうちに すぐに復旧できた。 

おもむろに 今回も前回と同じ手段を試してみるが 全く反応がない。
どうやら事態は深刻なようだ。

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■パソコンとの長いつきあい

パソコンとの長いつきあいを振り返れば、 パソコン黎明期のゲーム機時代から もうかれこれと かなりの年数だけは経ているのだが、概ね、年に 一、二回は すぐには直らない深刻なトラブルに見舞われている。経験年数とは関係なく その都度 苦労をさせられるのは、いまだに パソコン初心者の域を脱しない証しなのだろう。

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■ダメージは、以前より、格段に大きく深刻になった。

 確かに 昔のパソコンに比べ、今のパソコンは、格段に処理能力が上がってきていて、信頼度 安定度も高くなって トラブルも少なくなった。

だが、その分、一度に大量データをやりとりするようになってきているので、万が一にでも トラブルで動かなくなってしまったりした時には、パソコンユーザーが蒙るダメージは、以前より、格段に大きく深刻になったといえる。

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■パソコンメーカー

もっとも 、最近は 日本のパソコンメーカーの製品となっていても、使用ソフトの元になっている基本ソフトはもちろん外国製。使用する部品も 組立ても海外での生産であったり、そのうえ場合によっては 設計開発まで 外国製だったりして、日本のメーカーの国内の守備範囲では何ともできない ことも多い。

だから こうして 時折トラブルに見舞われるのは 単に 当たり 外れの運が悪いためだな などと諦めることも大事なことなのだろうとか思ってしまう。 

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■取扱い注意のパソコン

そもそも パソコンは基本的に 壊れやすいデリケートな物であり、その取扱いには特に注意を要するものだ。

 これを なんの故障なく使おうというのなら、 本来は、ごく限定的な範囲内で きわめて定常的な業務にだけしか使えないものだ。

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■玄関の引き戸で喩えるなら

パソコンを故障なく正しく使うというのを 住宅玄関の引き戸におきかえて喩えてみる。

パソコンで なんの不都合もなく できるというのは いわば きちんとした レールの上にある 玄関の引き戸を 丁寧に もの静かに そっと左右に 開け 閉め するだけ 程度の範囲では ないかだろうか。

事実 一般に 普通に 使用されて 正常に稼動する、多くのパソコンでは 腫れ物に触るように 引き戸をそっと開け閉めするように おとなしく扱われているだけだ。

しかしメーカーのカタログを見れば あれもできる、これもできると満艦飾のように、多くの可能性が書かれている。

これらを そのまま 鵜呑みにして 踊らされていくと、出口のないトンネルの中にどんどん入ってしまうことになってしまう。

 そのうち迷い込んで トンネル内でウロウロしている間に、パソコンは何でもできると思いこんでしまい、パソコン万能の幻想にとりつかれてしまう。

パソコンがもつ魔力の恐ろしさは、知らぬ間にパソコンが万能だと思い込ませることなのだ。

 パソコンなら何でもできるというパソコン万能の幻想など 決して抱いてはいけないのだが、かりに一度 その魔力に惹かれるいなや、すぐに戸を乱暴に手荒く扱いだして、 戸を貼りかえ、レール、戸車を外し 、戸に窓を開け 取っ手を変え、引き勝手を変えてみたりするようになり、やがては 戸を ふすまに変えたり 引き戸を、開き戸に変更し 開き勝手を、右に 左に 自由に変更したりしたくなる。

これらはパソコン魔力に惹き込まれた結果、パソコンなら何でもできるというパソコン万能の幻想にとりつかれてしまった ためだろう。

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■時間が過ぎる

つまらぬことを あれこれ考えながら、いじっているうちに たちまち時間が過ぎていく。

そのうち  マニュアル本や、解説本を出したり 調べ物をしたりして 分かったような気分になってから、更に、また色々とやってみる。

以前のパソコントラブルでは こうやって危機から無事脱出できたという過去の成功体験は まず通用しないほど 今日のパソコンはハード、ソフトともに 進化は著しい。

「十年一昔」 は世間一般のことで、今や パソコンの世界では 2-3年どころか、半年一昔などと 言われたりする。

が、使う人間のほうは もともと10年一昔、いや十年一日の生活習慣が 骨身に しっかり沁みこんでいる。

いずれにせよ パソコン初心者など 今日の パソコンの急激な進化には とてもおいついていけない。

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■問い合わせ

やはり 前回のトラブルとは全く違うようで、駄目で もともと と 思いながらも いろいろと電話や メールで問い合わせをしてみる。

メーカーのサポートセンターの電話など、 いつも話中ばかりで、何の役にも立たないものだと思いつつも、今日は不思議なことに 何度目かに たまたま通じた。

しかし ただ通り一遍の機械的なマニュアル返答を聞いて 苛立つだけの時間が過ぎてしまったことに すぐ後悔する。

メーカーにとって、あまりに大量に押し寄せる 問い合わせや クレームを いかにすばやく処理し 消費者の不満のガス抜きして、製造物製造責任などの訴訟リスクをうまく回避しながら 早めに、消費者が買い換えの気持ちになるよう うまく誘導していくのかが 一番 大切なことなのだろう。

いや そういうメーカー自身もパソコンのあまりに速い激流に、翻弄されていて、溺れかけながら、ただ もがいているだけなのだろうか?

そうこうしているうちにも 時間はどんどん経過する。

が 何も進展がない。

とうとう 八方ふさがりのようで 煮詰まってしまった。 
しかたなく 頭を冷やそうと、コーヒーブレークで しばし休憩。

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■休憩後

休憩後 また パソコンと向かいあって 別の手法で、復旧に取りかかるが やはり うまくいかない。
大事なデータが、どうなるのだろうと、気持ちは焦るばかりだが、もう どうしようもない。

今度は ちょっと 気分転換。外出して、取り急ぎ、所用も済ませてくる。

心機一転。 また別の手法で 再度 パソコンと格闘する。 ヤッパリだめ。

さらに一寸 一息入れて 気持ちを切り替えて また別の手で 再度チャレンジするも駄目。

これらを繰り返すうちに 夜もすっかり更けてきた。

結局 いじれば いじるほど 底なし沼の深みに入り込んだなと、うすうす感じて、そろそろ自力復旧をあきらめざるをえないかなと思い始める頃、急に疲労感や倦怠感が襲いかかってくる。

 今日はこれまで。

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■延々と幾度も繰り返し格闘

翌日 また パソコンと向かいあい、気分転換からヤッパリ駄目の一連のパターンを繰り返し、 さらに 何日間にも わたって あれこれと 延々と苦闘しながら パソコンと格闘していく。

こうしているうちに、 ときには ある日 突如として 復旧できるときもある。

 同じような作業をしていても 何度目かチャレンジのすえに どういうわけか僥倖に恵まれ、たまたま復旧できたのであった。

こうした時、「俺は何でもできる」といった自惚れが高じやすく 自信過剰になってしまう場合が多いのは まだ 人間が単純で 未熟なせいだろう。

もっとも この段階の自力復旧は気をつけないといけない。

というのも自力で復旧 できたと思っても  やはり完全には直ってなくて いずれ 使っていくうちに すぐに 前より もっとひどいトラブルに巻きこまれるという、痛いしっぺ返しをうけて 結局は 泣くことになるのが常なのである。

幸いなことに?今回は いくらやっても ヤッパリ駄目みたい。
どうやら 最終的に プロの助けが 必要だ。

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■メーカーの保証期間

このパソコンは 新しく買い換えたばかりで、メーカーの「保証期間」内だ。 無料で修理をしてくれるというのは有難い。だが 無料期間が終われば すぐに買い換えてくれということか と勘ぐるのは 今までメーカーの言うことを忠実に守って すぐ買い換えを続けてきた模範的な優良パソコンユーザーだったためか?

過去 「保証期間」内で「無料修理」に出したパソコンは 内部記憶装置(ハードディスク)の初期化に無理矢理 同意させられて 結局 データが飛んでしまって 頭の中が空っぽで帰ってきた。ただ単に 部品を付け替えるだけは 本当の意味では修理でないと、抗弁するのは贅沢なことのようで、結局、「保証期間無料」というメーカーの高等戦術の前には、ただの丸腰の個人ユーザーでは なすすべなく 従順に飼い馴らされるだけで どうしようもなかった。

「保証期間無料システム」での修理では まず 無理もいえないのである。「ただより高いものはない」 の貴重な 教訓であった。

考えてみると 自動車のリコール問題の原因となる 不良部品のように  パソコン部品に たまには欠陥など あるのかもしれない。 さらには 避けられないのがソフトウェアの欠陥(バグ)で これは なかなか なくならないと聞く。

自動アップデート機能を活用し 影に隠れて 知らぬ間に修正する 「リコール隠し」と疑われるようなことは パソコンの世界では当たり前のこととして 通常 平然と堂々と 行われている。
 
もともと パソコンのトラブルが いかに多くあり 簡単には避けられないものであるのか、 メーカー自身よくわかっているからこそ こうした「保証期間内無料修理」のシステムを導入するのだろう。 

こうしたパソコントラブルを いかに 上手に処理し、いかに 責任を回避し、消費者には 新製品に移り気をおこさせ、パソコンの買い換えをスムーズに促すか、これがメーカーにとって とても大事な販売戦略に違いないと 邪推したりする。

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■買い換えサイクル

そもそも 他の耐久消費財に比べてみて、パソコンほど買い換えサイクルの短い、短命なものはない。

寿命というより すぐに使えなくするようなシステムが こんなにうまく見事に出来上がっているとしか考えられない。

 高価なパソコンなのに 買い換えサイクルが 極端に短いことについては、誰もが納得しがたいことだと思っているはずなのに 表だって異議を挟むことなく 社会問題にすら ならない。みんな そんなものかと 渋々 割り切っているからか それともただ単に しょうがないと 諦めているのだろうか?

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■車についていえば、 

今なら 新車を買えば 普通に乗っていても最低10年は持つ。

リコールでもあれば どんな些細なことでも マスメディアは一斉に報道して自動車メーカーを徹底的に叩いて 非難してくれる。

世の中すべて パソコン並に2-3年毎に買い替えてくれたなら、どの業界も どんなに活況を呈することになるのかと思うのだが、一般耐久消費財の 買い替えサイクルはとても長く、十年 二十年 いや それ以上でも 十分 使える。

建物など 30年40年は当然のこととされているし、100年位の建築物もいくらでもある。

そもそも 建築では 永く人々に愛され、使われながら、親しまれ 慕われ 幾歳月を重ねてきた建物こそが 素晴らしく 本当に価値があるものとされていて、僅か 10年20年で消えてしまうような 建物は泡沫のようなものとされている。

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■自動車産業の成熟度

最近の日本の自動車産業を よくみてみる。

今日では優秀な日本車が世界各地で活躍している。

その日本車の歴史を辿ってみれば、その昔 高速道路もなかった 昭和30年代、道も悪かったが、車も少なかった。いまでは何の変哲もない スイスイ普通に走れる峠道でも、その当時の日本車では あえぎながら やっと登れるほどの大変な難所であったようで、当時の ちょっとした峠道では オーバーヒートしてボンネットを上げている車をよく見かけたものだった。峠でなくても 街中などでも 真夏には オーバーヒートで故障した車もチョイチョイみかけた。

昭和38年には 名神高速道路 栗東 尼崎間が 開通したが 当時の国産車では 高速走行に耐えられないで故障する車も多かった。

その当時の日本車の信頼度は低く 品質も悪かった。

その後の日本の自動車メーカーは必死になって品質や性能の向上に努力したのだろう。いまでは どんな険しい峠道にも もうそんな オーバーヒートしてエンストした車の光景など見ることもない。

工業製品の完成品として、成熟度の高い自動車に比べて、パソコンは未だ成熟してない未完成の発展途上の 熟度の低いものだと 善意に解釈すれば、パソコンのトラブルにかかわる 物事のかなりの部分が すんなり理解できるようになってきた。

故障以来、腹立たしい気持ちで一杯だったものが 考え方を変えて このように考えれば ようやく 腹の虫も 少しは おさまってきた。

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■プロのパソコン修理

今回の修理は ともかくデータが大事なのでメーカーの「無料保証」作戦の甘い誘惑を断ち切り、プロの「パソコン修理屋」にデータ復旧をふくめて「本当の修理」を依頼することにする。

修理に出して 一週間後、パソコンは データ ソフトウェア 設定など すべて きれいに元通りになって戻ってきた。ただし修理費は 高くついた。

もっとも プロの技の凄さを まざまざと見せつけてくれ、本来 プロはこうあるべきだという手本を指し示してくれたうえに、自己の自惚れ、自信過剰をも いとも簡単に 打ち砕いてくれ、謙虚さの重要性を教えてくれたという意味では 今度の修理費も 誠に安いリーズナブルなものであった。

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■貴重な体験に感謝

 今度のパソコントラブルもまた 貴重な体験であった。

世の中の移り変りは はやいぞ、うかうかすると とり残されるぞ、まだ まだ 未熟だぞ、もっと謙虚になれという 貴重なメッセージを与えてくれたことに深く感謝している。

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