活かすも 活かさないのも 使い方次第 常に危険性をもつ 山ネット情報



『もう道に 迷わない』野村 仁 著 山と溪谷社 2015年3月

活かすも 活かさないのも 使い方次第 常に危険性をもつ 山ネット情報

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『もう道に 迷わない』 野村 仁 2015年3月 山と溪谷社
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山岳遭難のなかでも 突出している 「道迷い遭難」。

山岳雑誌などで活躍している 山岳ライターの 野村 仁氏は この著書の中で 道迷い遭難事例を 詳しく 検証 分析している。

このなかで 過去の道迷い事例とは ちがった 近頃 目立つ 新しいタイプの道迷いの遭難事例を検証している。

遭難事例の1番目に紹介されているのは 「 S 山系 」で 道に迷い 生死を彷徨ったすえに 6日後に 奇跡的に無事救助された 遭難者Kさんの事例。

遭難者は 山行記録共有サービス「ヤマレコ」を使用していたが 奇しくも この遭難と 全く 同じ場所で 何ヶ月か前に 同じく別の「ヤマレコ」ユーザーNさんが 行方不明になり 遺体で発見されていた。

同一山域 全く同じ場所で 道迷い遭難 とは 本当に たまたま 偶然なのか?

さらに ふしぎなのは 一度は 道迷いから やっと 脱出できたのに 遭難者が またおなじ 道迷いの 迷宮ルートにわざわざ 自ら再び吸い込まれるように 入っていたのは なぜ?

著者の 野村氏は 後日 遭難者と一緒に 遭難現場を訪れ いろいろな角度から 遭難事例を 詳しく検証。

著者は 地形判断力 読図 リーダーシップ にわかパーティーでの 問題点などを 鋭く 指摘されている。

これらは ネット情報だけでは たやすく習得できない 登山の基礎で 習得しなければならない 「技術」 なのだろう。

インターネットだけでの 登山情報を取得することの危険性とか、インターネットの普及で SNS的な 山行共有サービスの 意図しない 危険をはらんでいる側面があることを 著者は 的確に指摘している。

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以前から心配されていたネット起因の遭難事故
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もともと インターネット黎明期から 心配されていた インターネット起因の山岳遭難事故。

近年の急速なインターネットの進展。 ネットの普及で この問題が大きく顕在化してきている。

インターネットが普及し始めた 初期にもう すでに インターネット起因の遭難事故がおきて 問題となっていた。

 2004年(平成16年)時点で 警視庁山岳救助隊の金 邦夫 氏は 奥多摩山域の日陰名栗峰での遭難事例などで ネット上での いわゆる「バリエーションルート」のもつ 危険性を鋭く 指摘されている。

(拙作サイトの編集方針でも これを参考にさせて頂いております)

金 邦夫氏(警視庁)が指摘する インターネットに起因する 遭難事故

http://shumiyama.web.fc2.com/yomoyama/henshuhousin.html

2004年以降 急激なインターネットの進展があった。さらに急速にSNS化などして 端末もスマホなどへと めまぐるしく変化していって、山岳遭難に かかわる ネット問題も 複雑化して 今日に至っている。

もとより 昔からの 登山者は 諸先輩 先人 地元の方々 はじめ いろいろな 書籍 書物 記録などから 様々な 登山情報を 広く 偏りなく集めて 様々な見方をもって 登山準備を怠りなくして 万全を期していた。

反対に インターネットは手軽に 簡単・便利だが 広く 万遍の情報であるかどうか 要注意だ。

インターネットを 情報収集として 利用するときは サイトの正確さなどや 個人的 偏りの意見など どうしても情報に偏りがでる可能性があり、登山情報を インターネットだけに 安易に 頼ることの危険性はかねてから 指摘されている。

実際に ネット情報で このような 同じ場所 同じような 道迷い を惹起するような 偏った情報が発信されてしまうのには なにか ネット情報に 本質的な 問題点は ないのだろうか。

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夏山トラブルに注意! ネット時代の登山ブーム
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 2015年には 山行記録共有サービス「ヤマレコ」などでも 実際に おきている 数々のトラブル事例。(驚いたことに ヤマレコストーカー問題なども発生)

そうしたおり 夏の登山シーズンの最中の 2015年7月 TV番組でも取りあげられた ネット時代の登山に関する 諸問題。


2015年7月28日(火)放送

「夏山トラブルに注意! ネット時代の登山ブーム」

山でおきた トラブル事例を検証している。

http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3692_all.html

■「氾濫する情報をうのみにして自分の実力に見合わない山に挑み、トラブルを起こすケースが相次いでいるのです。」

自分の実力を顧みない 実力以上に挑戦してしまう。


■「一部では派手な成功体験が独り歩きしたり、記録を競い合う風潮を生むなど、思わぬリスクにつながっています。」

成功体験の見せびらかし。

意味のない 記録の競争。


■「遭難寸前のことも経験しましたし、こういう集まりはやっぱり無謀だし危ないと気づいて。
人間関係の難しさ、それは経験になりましたね。」

山のネット社会でも 下界並のドロドロした人間関係や 複雑な リーダーシップなどの問題がある。


■「褒められたいと言ったら語弊があるかもしれないけれども、(ネット上で)いい反応を期待した山選びをしていたかもしれない。」

ネット上の反応を やたら気にする。


■「登山をする人には(登山サイトは)居心地のいい、楽しい空間だと思います。
私はそれと上手につきあうことは難しかったし、それで自分を見失う人も時にはいるんじゃないかなとは思いますね。」

心地よさに浸り 自分を失うこともあるかも?

ぬるま湯につかったような 心地よさ。

■「自分の書いた記録を残すため、もしくは人に記録を見てもらうために書くのであって、その記録を見て登る人のために書くわけではないので。」

ようはWEBサイトなど 管理人の 単なる ウェブ上の 備忘録にすぎない だけのこと。


■「実力が違えばもちろん感想も違いますし受け止め方も全然違うので、そのオフィシャルじゃない、客観性がないっていうところに関しては、情報を受ける側、調べる側が意識しなければならない問題だと思います。」

実力が違うと 受け方 感じ方も 異なる。

受け手が つい 身の丈に合わない登山を想定してしまう危険。

受け手は つねに 身の丈に あった 登山を 心がけなくてはいけない。


■長野県 遭難対策担当者
「(投稿者と)力量が違うことを前提にしないと、自分は行けると思うことは危険。」

投稿者の 力量を見定めることが大事。


■「無謀な登山をあおるような情報を削除。

「登山日数のランキングの掲載をやめました。
その一方で遭難などトラブルの体験を載せたコーナーを新設。
リスクに関する情報を積極的に発信しています。」

むしろ 失敗事例などのほうが大事。


■登山サイト 代表 的場一峰さん

「(サイトの情報を)きちんと受け取っていただければ、安全登山につながる一つになると思っている。」

まずは 受け取る側の問題。

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活かすも 活かさないのも 使い方次第 常に危険性
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 計7日間 S山系で生死を彷徨った遭難者Kさんは 山ネット情報で危険に陥ったが 捜索活動はヤマレコ情報や ヤマレコ仲間に助けられた。

インターネットの登山情報は うまく活かせば おおいに役に立ち 有益なものに なるが そうでない場合は 大変危険な ものになる。

まさに 諸刃の剣。


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TV番組の登山番組 著名山ブームをあおったりする
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TV番組の登山番組で やたら著名山ブームを 必要以上に あおったりするなどの問題点があるのではと かねてから指摘されている。

深田氏の書籍のみ だったら ここまで 著名山ブームに火がつくこともなかっただろう。

さらに、最近の 「グレートトラバース」もふくめ 著名山シリーズ ばかり放映される傾向にあるのは あきらかに著名山のみに偏りがあり なんとも不可解なところである。

また 最近では TV放映された日本アルプス縦断レースTJARを めざしてチャレンジしているのではないかと思われる方の遭難事例が2013-2014年にかけてあり TV番組も 同様に 諸刃の剣といえる功罪をはらんでいる。

(『山のリスクと向き合うために』149ページ 村越・長岡 東京新聞 2015年)


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情報洪水の中で自分の実力 正確に把握 的確な情報を取捨選択する選別力をもち 自省し謙虚さを
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結局のところ

インターネット TVメディアなどを 活かすも 活かさないのも 使い方 次第。

そうした 情報洪水の中で 自分の実力を 正確に把握しつつ 的確な情報を取捨選択していく 選別力を高めてていかなくてはいけない。

そのさい くれぐれも 自己過信せず 謙虚に 自分の 実力を悟って、 危険性を けっして軽視することのないように 今後とも 注意していかなくてはいけない。

インターネットの上で 山情報を発信したり 情報を受け取るとき 心がけなくてはいけないのは、とかく 人間は おだてられやすく うぬぼれやすく なんでも つい背伸びしたくなりやすく、すぐに なんでもできる、 可能と思いやすく、恐ろしいほど 自己過信に 陥りやすく、自己の足元を顧みないで おごり、つい有頂天になってしまう 傾向があるということ。

だから、つねに 自省し 素直に自分の実力を見極める 謙虚さを くれぐれも忘れないように していきたいものだ。


『山のリスクと向き合うために』村越 真・長岡健一著 東京新聞 2015年6月

2015年9月1日 記

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